【第10期 第1回講義】
「けっきょく”エネルギー”はどうすればよいの?~エネルギーと暮らしの満足の関係~」
国立環境研究所 社会システム領域
主任研究員
金森 有子 先生
お待たせいたしました! 2023年6月17日に実施した「第1回講義」にご登壇いただいた、国立環境研究所 社会システム領域 主任研究員 金森 有子先生より、皆さんの質問に対する回答が届きました! 学生の子どもたちから、たくさんの質問をいただきましたが、非常に多かったため、同じような質問をまとめてお答えいただいています。 金森先生の追加の特別講義、ぜひ読んで学んでみてください!
【国立環境研究所 社会システム領域 金森 有子先生が、みんなの質問に答えます!】
★質問1. 先生が自分の生活に取り入れている環境のためのことはありますか?
私の自宅には太陽光発電と蓄電池を設置しています。 また日々のエネルギー消費量を減らすために、冷暖房の使用温度の設定は、一般より抑えている方だと思います。 また機器の買い替えはなるべく効率の良いものを選択するようにしています。 こまめな生活は苦手なので、季節に応じて、冷蔵庫の強度や床にひくラグの種類を変える程度の工夫はしています。 一番の成果は、保育園に通う子供が最近少し省エネがわかってきたことだと思っています。
★質問2. どの時代が、日本人は、ちょうどいいバランスでエネルギーとうまくバランスよくつきあっていたのでしょうか。参考にしたいです。
回答が難しいです。 少なくとも現代が非常に多くのエネルギーを消費することで成立する社会であることは間違いないですが、現代の利便性を知っている状況で、今よりも不便な時代を評価するのは容易ではありません。 少なくとも私は、今より不便であった過去の時代に生まれたかったと思ったことはありません。 ズバリの回答はできませんが、今の時代の知恵と技術レベルにあったエネルギーの使い方を考えていくことが大切であることは間違いないと思います。
★質問3.バイオマスだけの未来になりますか?またその時、電気代はどうなりますか?
バイオマスだけの未来にはできないと思います。これだけの人口と現在の社会経済レベルを支えるのにバイオマスだけでは足りません。電気代の問題もありますが、「バイオマス燃料を作るため」と「食料を作るため」で土地の取り合いになるでしょう。十分にエネルギーを確保できず、エネルギーの価格は激しく高騰するのかな、と想像されます。
★質問4.日本の1人あたりの電気の消費量はこれから増えていくと思いますか?
増えていくと思います。講義でもお話ししましたが、化石燃料は燃やすと必ずCO2が排出されるので、再エネ等で発電した電気の使用に切り替えていくことが大切と言われています。また、水素の製造にも電気が必要です。こういった理由から、しばらくは1人あたり電気消費量が増えていくと思います。
★質問5.学校でできる節電は何かありますか?
学生の皆さんがすぐに実践できることは心がけになります。 例えば、教室に人がいないときに照明を消すとか、感染症対策などの必要がない場合は、冷暖房時に教室の窓や戸を閉めるといったことになると思います。 他にも、例えば女性で制服の指定で足元が冷えやすいといった場合には、タイツを認めてもらうといった学校への働きかけもできるかもしれません。 他にも冷暖房の機器が古い等の機器の更新が有効な対策となる場合は、学校(私立の場合)や自治体(公立の場合)に働きかけることもできます。節電ではありませんが、太陽光パネルが設置していない利用していない屋上がある場合は、太陽光パネルの設置の働きかけも有効でしょう。 なによりも、皆さん自身が「自分の学校で、どのような用途のためにエネルギーを利用しているのか知ること」がまず第一歩です。
★質問6.先進国の中でも、1人あたりのエネルギー使用量が、アメリカで多かったのはなぜですか?
アメリカの住宅は広く、所有する家電等も多いこと、また全館空調が導入されている住宅が多いことなどが理由と考えられます。ごみの発生量なども多いので、資源を大量消費するスタイルが「当たり前」になっているのかもしれません。
★質問7.講義中のグラフにあったように、2050年までにバイオマスや新燃料の発電を増やすには、どんな課題が残っているのですか?
バイオマス発電については、燃料となる木材等を輸入に依存していることにより安定して供給できる点に問題があります。 また現時点では発電コストも高く、発電効率も高くありません。発電コストや発電効率の問題は技術開発によりある程度解決されるかもしれませんが、原材料の調達については、森林・林業分野の計画やルールとの兼ね合いもあり、エネルギーの視点以外からも社会システムの見直しが必要です。 また、水素は製造に電力を使います。水素を作るために化石燃料を使った発電により得られた電力を使っては本末転倒です。水素を製造するために必要な電力をどのような形で確保するのが適切か、がポイントになるかと思います。
★質問8.日本で、一番風力発電に適している地域はどこですか。
いくつかあると思いますが、洋上風力の促進地域として挙げられるのは、長崎県五島市沖、千葉県銚子市沖、秋田県沖などが挙げられます。政府が促進区域や有望区域などとして定めています。
★質問9.再生可能エネルギーは地球環境に良いものなのに、なぜ普及しないのでしょうか。それを普及させるためには何が必要でしょうか。
どのような状況になれば普及したと言えるかは難しいですが、少なくとも太陽光発電、風力発電の導入量は右肩上がりで増え続けています。慈善事業ではありませんから、儲からないと普及しません。 儲かるためには、建設や維持のためのコストが下がり、電力の販売による儲けが大きくなることが必要です。技術の進展や必要なシステムが整ったため、導入量は増加しているものと思います。 一方、太陽光発電、風力発電ともに、無条件に設置が認められるわけではありません。 設置することが周辺住民や生態系への影響がないか確認したうえで、導入が進められる必要があります。再エネの導入については、周辺住民との間でトラブルになった事例もあることから、最近では導入に対して抵抗を受けることもあります。 こういったことへの丁寧な対応も重要です。
★質問10.ペロブスカイト型太陽電池は家庭でも実用可能ですか
商用化されれば家庭でも実用可能と思います。
★質問11.家の中でエネルギーを使っているものはなんでしょうか。 私はトイレのエネルギーのムダが多いと思います。何かいい方法はありますか。 電化することで省エネになると習いましたが、高温を使う場合(調理など)は直接燃焼させた方が効率的ではありませんか。(父より)
家庭により何にエネルギーを使っているかは異なります。 以前は冷蔵庫がかなりエネルギー消費をすると言われていましたが、冷蔵庫のエネルギー効率がだいぶ良くなったので、状況は変わっているものと思います。トイレについては、便座を暖める機能でそれなりに電力を消費しています。 私はカバーを付けることで、暖める機能は使用していませんが、掃除のしやすさなど様々な観点があると思うので、ご家族と考えてみて下さい。調理については、電熱線を利用したイメージであれば、ご指摘の通り電化が必ずしも省エネにつながらないですが、IHクッキングヒーターは磁界を発生させて加熱させるので、効率は悪くありません。 また、ガスコンロでは火が必ずしも鍋だけを温めることだけに使われません。そのため熱効率は50%程度と言われますが、IHクッキングヒーターの熱効率は非常に高いと言われています。 ただ、現在の発電では、今すぐIHに切り替えて、CO2削減につながるかと言ったら、少し厳しいかもしれません。ただし今後、発電において再エネが大量に導入されることにより発電時のCO2排出量が大きく減っていくと思われるので、そういったタイミングでは、電化が適切な選択になってきます。 また調理については、もし多くの世帯で電化された場合、同じタイミングで大規模な電力需要が発生することが懸念点としてあげられます。
★質問12.一戸建てとマンションどっちの方がエネルギーをつかいますか?
一般には一戸建てです。日本の場合は一戸建ての方が部屋が広いことが多いですし、断熱性能も低いです。 ただ、一人一人エネルギーの使い方は大きく異なるので、マンションに住んでいながら非常に多くのエネルギーを使う人がいても驚きませんが。
★質問13. 先生的には、お話しいただいた発電法の中では、どれが一番効率的で、so2が出なくていいと思いますか。先生の考えを、教えて下さい。
石炭火力発電などの場合は、石炭の燃焼に伴いSO2が発生しますが、それ以外の多くの発電方法ではSO2は発生しません。 どの発電方法が効率的かというご質問に対しては、経済的な効率性や発電効率など色々な効率があるので回答が難しいですが、エネルギーについては安定した供給というのが大きなポイントになるので、それを満たすような発電の組み合わせが必要になると思います。 1つの発電方法だけで賄うことは難しいです。
★質問14.タービンを回す以外の発電方法はありますか
例えば、太陽光発電はタービンを回さないタイプの発電です。
★質問15.ソーラー電池を、家電などにつけることは可能なのですか?
技術的にはできるのではないかと思いますが、必ず日の当たる場所に家電を置かないと意味がないので、そういった製品が売れないのではないでしょうか。そうするとメーカーが開発する理由がなくなってしまいます。
★質問16.日本でエネルギーの消費が一番多いのは、北海道で一番少ないのは、沖縄県ですか?
日本の「家庭部門(=住宅内で使用する)エネルギー消費量」について、平均でいえばその通りです。実際には北海道でもエネルギー消費量が少ないおうちはありますし、沖縄でも大量にエネルギーを使う人はいます。
★質問17.脱炭素社会にならなかったら地球は滅んでしまいますか?
すぐに滅ぶことはないと思いますが、人間が住みやすい場所は減ってくると思います。 海水面が上昇して沈んでしまう地域があると言われていますし、気温が高くなりすぎた場所も住みやすくはないでしょう。 人間が適応能力(=周囲の状況に応じて変化していく能力)があるので、滅ぶまではいかないと思います。
★質問18.先生は普段から省エネ生活していると思いますが、先生の省エネ生活に点数をつけるとしたら何点ですか?
100点満点中65点くらいです。オール電化にしていないこと、ガソリン車に乗っていることで大幅減点にしています。 それでも合格点?にしているのは、太陽光発電と蓄電池を設置しているからです。あと10年以内には、色々変えたいと思っています。
★質問19.小学生の時の将来の夢を教えてください。
正直なところ、あまりはっきり覚えていないのですが、研究者に興味があったような気がします。 でも「絶対かなえたい」というほど強いイメージは持っていなかったような…
金森先生のエクストラ講義、いかがでしたか?
金森先生、お忙しい中たくさんの質問にお答えいただきまして、本当にありがとうございました!!!