7月8日(土)に、第2回講義を実施しました!
今回は「土とは何だろうか?~泥だんごから食糧危機や気候変動まで~」というテーマで、森林総合研究所から土の研究者である藤井一至先生をお招きし、身近ではあるものの、学校では聞けない「土壌学」について楽しい講義をしていただきました。
講義では、土の定義や世界のさまざまな種類の土、土と食料や温暖化との関係について学びました。また、藤井先生からは自分の科学を楽しむことと、少しずつ研究を進めていく重要性をお話しいただきました。
藤井先生は、世界各地の土壌の成り立ちや、土壌と人間や生態系の関わりをご専門として、長い間地球の謎である「土」の利用方法や持続的な食糧生産の研究をされてきました。まさに土のエキスパートです。
みなさん、土の定義って何?といわれると、どう説明しますか?
「土」という言葉を広辞苑で調べると、「地殻の最表層。地殻表面の母岩が風化・崩壊したものに腐植などが加わり、気候、生物の作用を受けて生成したもの。」という何やら難しい文章が・・・。
ここで先生が紹介した定義は、「岩が分解してできた砂と粘土と、死んだ植物が混ざったもの。」という分かりやすい定義です。
これは、先生が大学院時代に飛行機で出会った、オーストラリアの小学3年生の言葉だそうです。
そんな土について知ったところで、学生たちにも身近な泥だんごのお話です。
そもそも、泥だんごを作るために必要な粘土は、なぜネバネバしているのでしょうか?
粘土とはシート状の構造をしたアルミニウムとシリコンで、電気を帯びています。電気を帯びることにより、粘土の周りには、水分子と結びついたカルシウムやマグネシウムなどのイオンが水膜を作ります。そして、細い管が液体を持ち上げる毛管現象が、粘土でも起こるのだそうです。
このような、水を引きつける粘土の特別な性質と、水が粘土同士をくっつけることが、粘土がネバネバする理由です。
子どもの頃は、当たり前に作っていた泥だんごですが、その理屈を理解している人は少ないのではないでしょうか。「粘土はなぜネバネバしているのか。」というような疑問を持つことは恥ずかしいことではなく、そのような疑問から一つ一つ物事の仕組みを解き明かしていくことが大事なのだと教わりました。
では、世界には何種類の土があるのでしょうか?
答えは、12種類!!!!!
それだけなの?そんなにあるの??みなさんは、どちらの反応でしょうか。
日本で土は「茶色」のイメージが強いですが、その色は場所によって、赤、白、黒などと多岐にわたります。デンマークの白い土や、日本のネバネバした茶色い土、アラスカの永久凍土など、先生はこれまでに世界中のさまざまな土を見てきたそうです。
そして土は、私たちの食料にも大きく関係しています。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、私たちが食べているものの95%は土からできています。しかし、日本では田畑が減っていることが原因で、これから食べ物が減っていくと言われています。
ここで先生が学生に見せたのは、1枚の白菜の写真。
カナダの永久凍土地帯に1軒だけあるスーパーで売られていた白菜ですが、萎れて色も悪くあまり美味しそうには見えません。
しかし、この白菜がなんと1800円するとのこと!
日本では考えられませんが、この地帯は土が凍っているため農業ができず、外国からの輸入に頼るしかないのです。対岸の火事のように聞こえる話ですが、これは日本でも起こりうる話で、私たちも食べ物を国内の土で育てることができない場合には、値段が高くても輸入に頼るしかありません。食料にはそれぞれ育てるのに適した土があるので、日本が作るのに得意なものは輸出し、苦手なものは輸入するという、自国の強みとリスクを理解することが大事だと教わりました。
また、土は温暖化とも関係しています。土には大気の2倍、植物の3倍の炭素が貯蔵されており、もし土がすべて分解してしまった場合には、大気中の二酸化炭素が3倍になるリスクがあります。
しかし、逆に土の中の有機物を増やすことができれば、排出された二酸化炭素を植物に吸収させて土に貯蔵し、温暖化を止めることができるとも言われています。
最後に、藤井先生からいただいた言葉は、「Enjoy Your Science!」。
世界には素晴らしい研究者が多数おり、自分が自由研究などから始めたところで、彼らには遠く及ばないと感じてしまいがちです。
しかし、自分の科学を持ち、自分なりの研究を一歩ずつやっていく。自分が楽しむにはどうしたらいいかを考えながら一歩ずつやっていくことで、やがて自分の目指すところに辿り着くことができるので、ハードルを上げすぎずに少しずつ楽しんでみてほしいとのことでした。
そして、そのためのテクニックを自分で見つけていくことが大切です。
次回は、8/10(木)の、夏の特別講義!
国立科学博物館 井手竜也先生による、ハチについての講義です。お楽しみに♪
藤井先生、楽しい講義をありがとうございました!
本日の司会者およびHR担当者は、学生部実行委員 黒澤陽太でした!