子ども大学グローバル
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第1回講義+入学式」修了しました。~けっきょく”エネルギー”はどうすればよいの?

 6月17日(土)に「子ども大学グローバル」第10期の「入学式+第1回講義」を実施しました。

コロナ禍ではオンライン講義をメインに展開してきましたが、今期はポストコロナ時代に合わせ、水戸・つくば・東京の配信会場にて学生の現地受講を受け入れる、「移動型キャンパス」を展開します。従来と同様にオンライン講義も実施し、様々な受講形態に対応しています。パワーアップした今期の子ども大学グローバルは、北海道から沖縄といった日本全国からの参加者だけではなく、「子ども大学」発祥の地であるドイツからの参加者も多数!募集人数を大幅に超える300名以上の学生とその保護者の方々と一緒に1年間学びを深めていきます。

入学式では、本学の学長である、お茶の水女子大学名誉教授・内田伸子学長より、子ども大学グローバルの意義や学ぶ重要性、親子で新しい学びを学んでほしいという式辞を述べていただきました。(内田学長には、4年ぶりに現地にお越しいただきました!)

学長からのメッセージは、「講義に積極的に参加し、学生自身の知識や経験に結びつけながら講義を聴講すること。講義中に先生へ積極的に質問してほしい。」といこと。
いよいよ第10期のスタートです!



さて、節目を迎える第10期のオープニング講義は、国立環境研究所の社会システム領域主任研究員である金森有子先生をお招きし、「けっきょく”エネルギー”はどうすればよいの?〜エネルギーと暮らしの満足の関係〜」というテーマで講義を行っていただきました。

金森先生は、「環境問題について自分に何か出来ないか・何か考えたい」という思いから環境についての研究を始め、現在では、国立環境研究所での研究や大学での講義などを行っています。

みなさんは、家で使っているエネルギーの種類を”すべて”答えられますか?
学生みなさんが「電気!」と回答したように、私たちの生活では主に「電気」を使用しています。
当たり前のエネルギー源ですが、「薪」を使って両親が火起こしをして料理などをしていたらどうだろうという問いかけられると、学生はみんなその大変さを想像し電気の利便さを感じていました。

では、私たちが普段使用しているエネルギーにどれだけの歴史があるのでしょうか。
はるか昔、まだ電気がなかった時代でも、人々にとって調理や暖房、照明は生きていくうえで必要でした。そこで彼らはバイオマスエネルギー(動植物由来のエネルギー)やろうそくなどを用いて生活をしていました。

 そして、一定の需要が満たされるようになると、人々はさらに、食物の貯蔵や輸送、水のくみ上げなどにおいて、よりエネルギーを必要とするようになります。
この頃には、以前のエネルギー源に加えて灯油や石炭などの自然資源が利用されるようになりました。勿論、調理や暖房、照明等も必要であり、これらにも自然資源が利用されていました。

さらに、現代においては、ICT(情報通信技術)や冷房などにおけるエネルギーの需要の高まりがみられるようになり、調理を始めとした基本的な生活必需も含めて、電気、ガスなどがエネルギーとして利用されています。このように時代の変化に伴い、調理、暖房、照明など、用途が同じであったとしても、それに対して利用されるエネルギーの種類はどんどんと変化していきます。

このようなエネルギーの変化には、国としてエネルギーを選ぶ時の3つの条件が関係しています。
それぞれ「どれだけ安く入手できるか」「どれだけ簡単に輸送できるか」「どれだけ確実に入手できるか」というものです。

エネルギーの消費量についてグラフを見ると、先進国であるほど一人当たりのエネルギー消費量が大きいことが分かります。つまり、豊かな生活ほど多くのエネルギーが必要になるのでしょうか?
先生によると、エネルギーの消費量が大きくなる3つの条件は「より寒いほう、より多い人数で住むほう、より家が広いほう」とのこと。
実際に世界地図を見ると、エネルギー消費量が多い国ほど寒い地域に位置していることが分かります。しかし、先生によると結局のところエネルギーの消費は人(世帯)それぞれのため、エネルギー消費量が大きいからといって必ずしも豊かな生活とは言えないとのことでした。

エネルギーの消費を別の観点で見ると、そもそも発電所で作られるエネルギーは、私達が使っているエネルギーの総量より非常に多いですが、私達が使用できるように変化させたり、運んだりするときに減ってしまいます。一口にエネルギーといっても様々な種類(石炭や石油、天然ガス、原子力、水力や再生可能エネルギー等)がありますが、この中で日本が発電のためのエネルギー源として供給できるのは水力発電と再生可能エネルギーだけなのです。自分の国で必要なエネルギー源を供給できないことを「エネルギー自給率が低い」と言い、日本は普段使っているエネルギーを作るために他の国に頼っている「エネルギー自給率の低い国」といえます。

また、日本は将来に向けて、使用するエネルギーの種類を大きく変え、これまでに比べ化石燃料から水力、再生可能エネルギー、未活用エネルギーの割合を増やそうとしています。
なぜ、使用するエネルギーを変える必要があるのでしょうか。これには気候変動問題が大きく関わっています。火力発電などによって排出される二酸化炭素の濃度は年々確実に上がっており、金森先生が所属されている国立環境研究所では、2050年には”二酸化炭素の排出を実質0にする脱炭素社会”を実現することを目指しているそうです。

2050年の脱炭素社会で私たちがどのようなエネルギーを使用していくかについては、再生可能エネルギーに加え、新たに2種類のエネルギーが考えられています。1つ目は水素や水素と二酸化炭素を合わせた合成燃料等の新燃料と呼ばれるエネルギー。そして2つ目はバイオマスと呼ばれる、動植物が由来のエネルギーです。このバイオマス燃料が二酸化炭素の排出量が実質0といわれる理由は、木を切り、燃やすことで二酸化炭素を排出するものの、木を切った場所に植林をすることで新たな木が生まれ実質0になると考えられるからだそうです。

これから先、私たちが目指すべき脱炭素社会に向けて何ができるのでしょうか。
先生は、3つのことを挙げてくださいました。
1つ目は「省エネ」です。そもそもエネルギー消費量を減らすことが必要で、生活におけるエネルギーの無駄遣いを止めて、住宅の断熱性や電気効率の良い機器に買い替えることが重要です。
2つ目は「エネルギーの低炭素化」です。太陽光発電の設置、電気会社や契約内容の見直しによりCO2の排出量が少ない発電方法でつくられた電気を選択するなどの方法があります。
そして3つ目の「電化」とは化石燃料から電気の使用に切り替える事を言い、ガスや灯油を使用する機器を電化機器に買い替えるなどの方法があります。これらの3つのポイント全てに同時に取り組むことで脱炭素社会を実現することができるのです。

エネルギー問題に対して、学生という立場からだと何も出来ないようにも考えられますが、学生にもできることがたくさんあります。エネルギー問題や気候変動問題について自ら学ぶことや、先の時代をどう生きていきたいか想像すること、自分の意見を人に限らず学校や地域に対しても伝えることなど、未来のために学生にも出来ることはたくさんあるのです。
最後に、金森先生は「皆さんはどんな暮らしがしたいですか?豊かで住みやすい未来はみんなが作ってください。」とメッセージを残されました。
ここから先は、今のままで豊かな未来は訪れるのか、何をすれば良い未来に繋がるかなどを、学生ら自身が自ら考え自ら行動し未来を変えていくことが必要ですね。


子ども大学グローバルの講義は、子どもも大人も驚き考えさせる、専門的な講義です。
学年に応じて、捉え方、難しさも異なりますが、継続して参加し、学年が上がるにつれて、学びや気づきも多くなっていくことを楽しんでいる子どもたちもたくさんいます。
今回も、現地で、ライブ配信のチャットコメントで、Zoomでの直接質問で、そして、アーカイブ動画からテキストでの質問で、いろいろな方法で講義が進みました。
金森先生、ありがとうございました!

本日の司会者は、学生部実行委員、園部華枝でした!