子ども大学グローバル
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「夏の特別講義」終了しました!~刺すハチだけがハチじゃない?

2023年8月10日、第10期の夏の特別講義を実施しました!

夏の特別講義では、「刺すハチだけがハチじゃない?〜ハチと生き物の関わり合いを学ぼう〜」というテーマのもと、国立科学博物館の井手竜也先生にご登壇頂きました。
井手先生は、ハチの中でも特に「タマバチ」を専門に研究をされています。

みなさんは、ハチとアブの違いを知っていますか?
本講義では、何と、先生が大きな顕微鏡をご持参!標本を顕微鏡で観察し、頭部の構造と羽の枚数が異なっているという違いを見せてくださいました。
そして、昆虫はの分類は「動物」になるのだそうです!

そしていよいよ本題の「ハチ」について、みなさんもご存知のミツバチの生態について先生に紹介していただきました。
ミツバチはミツバチ科ミツバチ属に分類され、日本にはニホンミツバチやセイヨウミツバチなどが生息しています。
ミツバチには一匹の女王バチと、その子どもであるたくさんの働きバチと少しのオスバチがいます。そして、働きバチたちはハチミツを作ったり、花粉団子を作ったりといった役割があります。

ここで、花粉団子の作り方について、なんと井手先生が、ダンボールで工作したコスチュームでミツバチに扮して説明してくださいました!!!
まず、頭部についた花粉を前足でとります。次にそれを中足で集め、後ろ足にもっていきます。後ろ足ですり合わせ、口から蜜を出してつなぎにして花粉団子を作ります。後ろ足にある一本の毛を串のように使い、花粉団子を巣へ運ぶとのことです。働きバチが運んだ花粉は幼虫の餌となり、また花にとってはハチに花粉を運んでもらうことで受粉に役立ちます。このようにミツバチと花々はもちつもたれつの関係にあるのです。
井出先生バチの説明はすごく分かりやすかったです!

続いては、ハチと他の生物との関係についてのお話です。
まず初めに紹介していただいたのは、ハチと植物についてです。
ハチと植物といえば、さきほどのミツバチと花の関係が代表的ですが、特定の花から蜜を吸うハチがいます。例えば、クマバチは藤の花などのマメ科の植物から、ヒメハナバチはウツギから蜜を吸います。これらのハチは、自分がとまりやすいような形をした花の蜜を吸う仕組みになっているそうです。他にも、香りを集めるシダバチや幼虫が葉を食べるハバチ、幼虫が木を食べるキバチ、コブをつくるタマバチなどがいます。タマバチは植物の芽や葉に卵をつけたあと、卵を覆うように虫こぶを作ります。ちなみに、この虫こぶは卵が孵化した後に幼虫の餌として、幼虫に食料を供給する役割があります。

そして、ここで先生から3択クイズが出題!問題の内容は井手先生がこの夏、アメリカに訪れた際に観察した世界的にも珍しい虫こぶに関するもので、この虫こぶが持つ面白い特徴はどれでしょう?という問題です。選択肢は、①あまい②はねる③かたいの3つです。どの選択肢も驚くものばかりですが、一体どれでしょう。正解は、なんと②はねるです!

では、なぜ虫こぶははねるのでしょうか?実はこの虫こぶの中には幼虫がいます。この幼虫の体液が頭から下に移動すると、幼虫が跳ね、虫こぶがはねているように見えるそうです。しかし、このはねる現象は乾燥しているときにしか起きない、とてもレアな現象だそうです。また、タマムシの他にもイチジクコバチというハチが虫こぶを作ります。イチジクコバチのメスはイチジクに卵を産み付けます。そのイチジクで成長した新たなイチジクコバチのメスが他のイチジクにまた新たな卵を産み付けることで、イチジクは受粉することができます。つまり、イチジクはイチジクコバチがいないと受粉することができませんし、イチジクコバチはイチジクがないと子孫を残すことができないのです。このように、ハチと植物は互いに助け合って共生しているのです。

そして、最後に紹介していただいたのはハチとヒトの関係についてです。ハチといえば、ヒトを襲うハチを想像する人もいるのではないでしょうか?ところが、実はヒトを襲うハチは限られています。ヒトを襲うハチは集団で生活し巣を守るために攻撃することがあります。例えば、スズメバチやアシナガバチがこれに該当しますが、仮に出くわしてしまっても、捕まえたり驚かしたりしなければ刺される可能性は低いそうです。また、ハチがヒトに恩恵を与えることもあります。ハチミツを作るミツバチや、果物を実らせるためのハナバチ、また、タマバチの一種であるインクタマバチは、自身が作る虫こぶがインクの原料に使われるそうです。一方で、ヒトがハチに悪影響を与えてしまうこともあります。ヒトが畑で過剰な農薬を使うことや、外来種を持ち込むことによって、在来種のハチの住みかが脅かされてしまうことなどが挙げられます。

本講義では、多種多様なハチや、ハチとたくさんの生き物の関わり合いについて教えていただきました。井手先生は最後に、「今日学んだことを入口にして、ハチに興味を持って、まわりの暮らしを見てほしい」という言葉で講義を締めくくりました。
井手先生、夏の特別講義ありがとうございました!

本日の司会進行は、学生部実行委員の大津弦将でした!