子ども大学グローバル
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【国立環境研究所/大阪公立大学 竹内やよい先生より】質問の回答が届きました!

【第12期第1回講義】
「熱帯林のふしぎな生き物と私たちの暮らし ~遠い国の森とどうつながっているの?~」

国立環境研究所 生物多様性領域 主任研究員
大阪公立大学理学研究科 教授
竹内やよい 先生

お待たせいたしました!
2025年6月21日に実施した「第12期第1回講義」にご登壇いただいた、国立環境研究所-生物多様性領域主任研究員で、大阪公立大学理学研究科教授の竹内やよい先生より、皆さんの質問に対する回答が届きました!
竹内先生の追加の特別講義、ぜひ読んで学んでみてください!

【国立環境研究所/大阪公立大学 竹内やよい先生が、みんなの質問に答えます!】

★質問1. ラフレシアはあんな数日に枯れてしまうのに、なぜ咲いている意味があるのですか?
ラフレシアが群生することはありますか? 群生したら臭いですか?(すごくはなれていても臭いでわかるときいたことがあります)
また、ラフレシアのDNA検査はどの部分を使って検査するのでしょうか。

花が咲いた後ラフレシアは枯れてしまいますが、花が咲いているうちに花粉を運んでもらい、種子ができれば、自分のこどもを残すことができます。数日しか咲かないので、同じ時にほかのラフレシアも咲いてないと種子をつけることができません。ですから、少しでも多くのラフレシアを保全することが大切です。

ラフレシアは同じ場所にいくつかまとまって見つかることが多いです。これは、ラフレシアが生きるために必要なブドウの仲間のツル植物(ホスト)がそこにあることや、ラフレシアの種子が近くに散布されやすいためだと考えられます。ラフレシアの花が咲くと、腐った食べ物のようなにおいを出しますが、私の経験では、人がにおいを感じるには近くまで行く必要があります。ラフレシアの花粉を運ぶハエはとても優れた嗅覚(においをかぐ力)を持っているので、遠くからでもにおいを感じ取ることができます。

発達の途中にある細胞には、DNAがたくさん入っているので、私たちの研究では花のつぼみ(花芽)の一部を使いました。でも、発達の途中の細胞にはねばねばしたもの(多糖類)もたくさん入っているので、きれいなDNAを取り出すのに苦労しました。

★質問2. ボルネオ島にはレッドリストに載っている生物がいるとおっしゃっていましたが、残念なことにボルネオ島で絶滅してしまった生き物はいるんですか?
熱帯雨林にはなぜ絶滅危惧種が多いのでしょうか、また絶滅危惧種のランク分けの基準はありますか?
ボルネオの森林はどう進化していくと思いますか?

スマトラサイは、もともとスマトラ島とボルネオ島、マレー半島に分布するサイの一種ですが、ボルネオ島にだけいる亜種がいました。スマトラサイは、角をとるために個体数が減ってしまい、2015年にボルネオ島マレーシア領では野生では絶滅したといわれています。インドネシア側のボルネオ島で見つかったという話はありますが、今ではボルネオ島のどこでもほとんどいなくなってしまったと考えられています。

熱帯には個体数が少ないめずらしい生物が多く、森の開発などで生息地が失われ、絶滅危惧になりやすい状況にあります。絶滅危惧種のランクについて、世界でよく使われる指標として、IUCNレッドリストカテゴリーがあります。例えば、EX(絶滅)、EW(野生絶滅)、CR(深刻な危機)、EN(危機)、VU(危急)、NT(準絶滅危惧)、LC(低リスク)などに分けられ、このうちCR、EN、VUが絶滅危惧種とされます。カテゴリー分けは、個体数の減少、分布の広さ、成熟個体の数や減少状況、絶滅の危険度などで決められています。

ボルネオの熱帯林は、これまでの開発や人の影響に加え、最近では気候変動による干ばつや洪水の影響も受けており、今後森林にすむ動植物の種類が大きく変わっていくと考えられます。さらに、昆虫や植物など生物多様性の減少も進んでいることや、気候変動によって乾燥が起こる頻度が変われば大規模な一斉開花が見られなくなる可能性もあります。そのため、開発や人の影響を最小限に抑えること、森林をモニタリングし続けることが大切です。

★質問3. 熱帯雨林がなくなっちゃたらどうなるのですか?
また、熱帯雨林では、伐採以外に害虫や微生物などによる被害の問題はないのですか。

熱帯雨林がなくなると、雨が少なくなってしまうと考えられます。熱帯雨林は土から水を吸って空に水蒸気を出す働きをもっており、その水蒸気が雨になるからです。また、二酸化炭素が空気中に放出されるので温暖化も進みます。熱帯雨林は現地の人たちが食べ物や材料をとる大切な場所ですが、なくなってしまうとこうした利用もできなくなります。

熱帯雨林にも木にとっての害虫や病気の原因となる菌はたくさんいますが、それらが大発生して木がたくさん枯れることはほとんどありません。むしろ害虫や病菌は、同じ植物が増えすぎないように調整する役割があると考えられています。

★質問4. 一斉開花が起こる原因について、なぜ乾燥すると起こるのか、また乾燥以外に、先生の意見はありますか?
また、一斉開花をする理由はなにかあるのでしょうか。
オオミツバチは、一斉開花以外の時期はどこに住んでいるのですか?

種子をつくるためには、同じ種類の木が同じ時に花を咲かせることが大事です。そのため、花を咲かせる「合図」が必要です。ボルネオ島では気温や湿度、昼の長さ(日長)が一年中あまり変わらないので合図となるものがほとんどありません。それでも、数年に一度、強い乾燥がおこるので、それを合図として使うようになったのだと考えられます。そのほか、花や種子をつくるためには木は栄養を十分にたくわえることも必要です。栄養が十分である木だけが花を咲かせられるのではないかと考えています。

一斉開花の良い点は、森の中に大量の花があることで花粉を運ぶ虫や動物(送粉者)を引きよせやすくなることです。また、一斉結実では種子が大量にあるため動物が食べきれず、生き残る種子や芽生えが増える点もあります。

オオミツバチは一斉開花がないとき、川の近くの森にすんでいると言われています。これは、川の近くの木はよく花を咲かせているため、オオミツバチが花の蜜を集めやすいからです。

★質問5. 現地の人は、なぜ一軒家ではなくロングハウスに住むのですか?大雨などで川が増水し、流されたりしないのでしょうか。

ロングハウスは、ボルネオの先住民の伝統的な家で、近隣住民が協力しやすい、防犯上の利点があると言われています。ロングハウスは高床式で洪水にも強いですが、近年は気候変動で洪水の規模が大きくなり浸水することもあり、ロングハウスを内陸に移したり、個別の家にする人も増えています。

★質問6. 直径1cm以上の樹を数えて、1172種類と、先生は言っていましたが、どうやって、数えたんですか?とても小さい樹もあると思うので、不思議でした。何日くらいかかりましたか。
その1172種類の木の中で、日本にも生息しているものはありますか?

52ヘクタールの森を区切って調べる場所を決めます。手作業で、その中にある直径1cm以上の木すべてに番号のタグをつけて、直径を測り、種類を調べます。種類がわからない木は標本を持ち帰って調べます。この作業は10~15人のチームで、1年以上かかったと聞きました。

種としては、日本に生息しているものはありません。科や属などで共通するグループはあります。(マメ科ネムノキ属、トウダイグサ科アカメガシワ属など)

★質問7. 先生がこの研究をしようと思ったキッカケは何ですか
また、フィールドワークをする中で、一番印象に残っている出来事は何ですか?
やよい先生は1日何時間研究をしているのですか?今回のお話はどのくらいの期間、研究をしてきたのでしょうか。

私が大学のときに初めて行った海外がマレーシアのボルネオ島で、そこで見た熱帯林は樹高が高く、いろいろな形の葉っぱがあったり、セミや鳥のいろんな音が聞こえたりと、その多様性の高さと力強さに感動しました。日本に帰ってから熱帯林の本(「生命の宝庫・熱帯雨林 井上民二著」など)を読み、もっと知りたいと思って研究を始めたのがきっかけです。

一斉開花が始まったとき、クレーンを使って夜中にフタバガキの木の林冠の花を観察しました。夜明け前の真っ暗な中で花が咲き始めると、どこからともなくオオミツバチが集まり、林冠の中が花粉をつけたオオミツバチでいっぱいになりました。その光景がとても印象に残っています。 今は授業などもあるので、1日に2~3時間くらいが研究の時間です。私が大学院生・博士研究員の頃は、1日の大半の時間、約6~8時間くらいは研究できてました。今回の話は、学生のころから続けている研究で、もう25年くらい研究を続けてきたことになります。

★質問8.動物を撮影していたカメラに動物が来るようにする、仕掛けや工夫は何かあるのですか?

森には動物が通る「けものみち」があります。この道の近くで見通しのよい場所にカメラを置くと、動物が写りやすくなります。
また、動物が集まる塩場(動物が土や水から塩分をとる場所)がわかっている場合、そこにカメラを設置するのも効果的です。

★質問9. 日本での自然保護はどれだけ進んでいるのですか?日本にいる私たちが、遠い国にある熱帯雨林を守るために何をするべきでしょうか?
ネイチャーポジティブに向けて、なるべく身近なことで、できることはあるでしょうか。
森林の断片化について、アムールトラの生きる場所が年々少なくなってきて、絶滅危惧種がおり、だから動物園で保護しているんだと飼育員さんが言っていました。そのために、わたしができることはあるのでしょうか?
マレーグマが住めるきれいな森とはどんな森なのか。
アムールトラをはじめ、数が少なくなっている動物たちみんなが安心して森で生きられるようにするには、どれくいの木を植えてどれくらいの木を切らなければいいのでしょうか?

日本では、国立公園などの保護区が陸地の約20.5%、海の約13.3%を占め、世界的にも多い方です。現在は「30by30」目標(陸と海の30%以上を保全)を掲げ、民間地域も含めて保護地域の割合を増やすことを目指しています。そのほかにも、希少種の保全、外来種対策、気候変動の影響への対応などの自然保護の課題がありますが、それぞれ対策が進められています。熱帯雨林を守るために私たちができることは、まず私たちの身近にも熱帯地域から来たもの(紙、木材、食べ物など)がたくさんあることを知ることです。そして、それらのものを大切に使ってムダづかいしないこと、ものを買うときは環境に配慮した認証マークのついた商品を選ぶこと(持続可能な経営を応援すること)が、遠くの熱帯雨林を守ることにつながります。

ネイチャーポジティブのためには、私たちの意識を変えることが必要です。まず、私たちのまわりには多くの生き物がいて、自然や生き物が私たちの生活・社会とつながっていることを知りましょう。そのうえで、ものを大切に使ってムダづかいしないことや、買うときに環境に配慮した認証マークのついた商品を選ぶこと(持続可能な経営を応援すること)が、ネイチャーポジティブへつながると考えます。

“生物の保全には 生息域内保全(自然の中で守る)と生息域外保全(動物園・植物園などで守る)があります。生息域内での保全がまず基本になりますが、その時生物の脅威となる原因を知ることが重要です。アムールトラの場合は森林伐採、農地開発、密猟が原因であり、それらの原因を取り除く行動が必要になります。また、森林が断片化している場合は、動物が行き来できるよう森をつなぐ回廊(コリドー)をつくることが有効だと言われています。

日本にいる私たちにできることは、こうした現状を知ること、そして森林や農地から来る製品を使う場合は、「持続可能な経営」の認証がある製品を選ぶことです。これが森林伐採を減らし、アムールトラの生きる森を守ることにつながります。

マレーグマは、果物や昆虫、ハチミツなど食べ、また木登りが得意です。マレーグマにとってそういった物が手に入る森は、人の手があまり入っていない森原生状態に近い森だと言われています。
「何本の木を植えて、何本の木を切ればいいのか」という形では答えられませんが、動物たちが安心して森で生きられるために、どれくらいの場所を守る必要があるか については研究があります。場所によって違いはありますが、地域の25%〜75%(平均で訳50%)を保護すれば、生き物の多様性や森のしくみを守ることができるという研究結果でした。特に熱帯地域では、生き物の種類がとても多いため、より広い範囲を守ることが大切だと言われています。

★質問10. 先生は、2030年までの目標である23個の目標のうち何個達成できると思いますか?

前回の愛知目標の進捗状況を示す56の要素で評価したところ、86%が達成には不十分、または進展なし・後退していると評価され、完全に達成した目標は20個のうち一つもありませんでした。今回の昆明モントリオール生物多様性枠組(23目標)も達成は簡単ではありませんが、日本が取り組みを進めている目標3(30by30)、目標2(劣化地回復30%)、目標19(資金動員)と関連する約9つの目標だけでも、ぜひ達成してほしいと思います。

いかがでしたか?
竹内先生、お忙しい中丁寧にご回答いただき、ありがとうございました!!!!!