第4回講義では、森林研究・整備機構の主任研究員であり、三重大学生物資源学部の教授である神崎菜摘先生にご登壇頂き「面白い?ちょっと気持ち悪い?線虫の世界~1ミリの探検者:線虫が解き明かす生命のしくみ~」というテーマのもと、線虫とは何か、そして、神崎先生が行っている研究について学びました。

まずは、線虫とは何かについて解説いただきました。皆さんは、線虫についてご存知でしょうか。線虫はとても小さな動物ですが、多くの種類があり、形や大きさ、暮らしている場所も様々です。バクテリアや海藻を食べるものがいる一方で、植物や昆虫、人に寄生する線虫もいます。普段目にする線虫の大きさは、1〜2 mmほどですが、最小では0.08 mm、最大ではなんと8 mに達するものも存在します。その幅広い大きさから、線虫の多様性がうかがえます。
線虫は、私たちの身の回りだけでなく、地球のあらゆる場所に生息しています。高い木や森、土の中はもちろん、地下3,600 mの金鉱山や南極のような極限の環境でも見つかっています。これほど広く分布している線虫ですが、いったい何種類いるのか未だ分かっておらず、現在知られている約3万種のほかに、何十万~何億種もいるのではないかとも言われているそうです。
線虫には、害虫となる種類もいれば、益虫の役割となる種類もいます。例えば、作物の根に感染するシストセンチュウや魚に寄生するアニサキスなどが害虫にあたる一方で、害虫を退治する線虫が農業の現場で使われていることや、研究材料として活躍する線虫(C. elegans)もいます。線虫は、人間と似た器官を持っており、成長も早く扱いやすく、研究に適しているため、ノーベル賞につながる発見も生み出してきました。

続いて、神崎先生が行っている研究について紹介してくださいました。神崎先生は、昆虫とその昆虫に付着する線虫との関係性について研究をしています。例えば、昆虫と線虫との間には寄生や共生、便乗(昆虫を移動手段として利用する)など、その関係は多岐にわたります。
では、どのようにして研究しているのでしょうか。神崎先生はフィールドワークで捕まえた昆虫を解剖し、そこから得られた線虫をシャーレで培養し調べています。これまでスズメバチやカミキリムシ、クワガタムシなど多くの昆虫を用いたそうです。この研究の結果、昆虫が生息している環境の栄養価によって、昆虫についている線虫が概ね決まる(カビ食性なのか、バクテリア食性なのか)ことが分かったそうです。
ここで、実際に昆虫(ゴキブリ)を解剖し線虫を取り出す操作を実演してくださいました。ただし、線虫は必ずしも寄生しているいるとは限らないそうで、講義でも線虫を取り出すことができるか学生たちが固唾をのんで見守っていました。神崎先生が解剖を進めたところ、無事線虫を取り出すことができ、実際に動いている様子を顕微鏡で見ることができました!取り出した際には現地の会場からも歓声があがり盛り上がっていました。

神崎先生は、このような作業から線虫の新種を見つけることもあり、新種を命名したこともあるそうです。ただし、新種を探すばかりではなく、線虫のもつ特徴についても研究をしています。それは、線虫の表現型多型についてです。表現型多型とは遺伝的変化によらない形の変化で、例としてバッタが沢山いるとバッタの色が変わることが有名です。この表現型多型が線虫にも確認されています。例えば、餌が十分な環境だと歯の幅が短い細菌食型、餌が不足していると歯の幅が広くなり、他の線虫を食べる捕食型になるといった変化があるそうです。環境に応じて線虫が姿を変え適応していることが分かります。
本講義を通して、線虫がいかに多様で、私たちの生活や研究の場で思いがけない役割を持っている生き物だと知ることができたと思います。目には映りにくい世界にも、驚きと発見がたくさんあることを感じさせる内容でした。
神崎先生、講義ありがとうございました。
