第12期第3回講義
うごく!?未来のおすし~3Dフードプリンターで いきものみたいな食べものをつくるしくみ~
山形大学 工学部 教授
古川英光 先生
お待たせいたしました!
2025年10月4に実施した「第12期第3回講義」にご登壇いただいた、山形大学 工学部の古川英光先生より、皆さんの質問に対する回答が届きました!
古川先生の追加の特別講義、ぜひ読んで学んでみてください!
【山形大学 工学部 教授 古川英光先生が、みんなの質問に答えます!】
★質問1.現時点で、3Dプリンターでは再現の難しい食品はありますか。
また、あるならばなぜ再現が難しいのですか。
カレーのような液体、液状のものを3Dプリンタで作ることはできますか。
発酵食品も同じように再現できますか。
最近むずかしいなと思うのは、ポッキーのような細くて長いお菓子を作ることです。
すぐに折れてしまったり、まっすぐ立たせるのがたいへんなんです。
また、食べられるお皿やフォーク、スプーンを作ってみたいというお願いもありますが、「使う時はしっかりしていて、食べたい時には食べられる」ようにするのは、まだむずかしい課題です。
カレーやシチューのようなトロトロした料理をきれいに形にする方法も研究の途中です。
発酵食品はむずかしいですが、チーズや納豆に似たようなものなら作ることができそうです。
★質問2.作った食べ物を非常食として活用することも考えているのですか。
はい、考えています。
できれば、非常時でもおいしくて元気が出るような食べものを、その場でプリンターが作り出せるようにしたいと思っています。
そのために、長く保存できる「凍結ゲル粉末」という材料の研究を進めています。
それをプリンターにセットすれば、すぐに食べられる形に戻すことができるようにしたいんです。
★質問3.先生が今まで作ってきた中で一番美味しかったものは、何ですか。
一番おいしかったのはウニのおすしです。
その次においしかったのは、凍結ゲル粉末を使って作った枝豆やじゃがいものスープです。あたたかくて、やさしい味がしました。
★質問4.実用化の上で一番大きな問題とその解決策として古川先生がお考えになっているものを挙げてほしいです。
作るのに時間がかかると言っていたのですが、今後大量にはやく作るとしたら、何が必要になるのか気になります。
いちばんの課題は、おいしいものを早く、かんたんに作ることです。
3Dプリンターの機械、データを作るコンピューター、材料としての食品の性質、そして料理としての味や見た目など、たくさんの知識と技術が必要です。これらを意識しなくても、だれでも使いやすくする方法を考えています。
大量に作るには、プリンターのスピードを上げたり、データ処理を自動化したりする工夫が必要です。
★質問5.外国と日本での3Dフードプリンターへの反応に違いがありますか。
海外では、まだ便利とは言えないけれど、レストランなどで3Dフードプリンターを使うお店が少しずつ増えています。
日本ではまだあまり使われていないので、もっとおいしくて、もっと便利に作れるようにすることが大事だと思っています。
★質問6.世界一強いゲルは熱にも強いんですか。ゲルの名前の由来はなんですか。
ゲルは、見た目はやわらかいけれど、中はとても強い材料です。熱にも強くて、100℃にしてもとけません。
ゲルの中には二重のあみ目のような構造があって、「ダブルネットワークゲル」と呼ばれています。
二重(ダブル)の網目構造(ネットワーク)をもっていることが、名前の由来です。
★質問7.3Dプリンターで食べ物のかたさや焼き加減はどうやって表現しますか。
食べもののかたさややわらかさは、使う材料を変えたり、中に小さな穴をあけたり、うすくしたりして調整します。かたいところとやわらかいところを交互に組み合わせることで、かむ方向によってかたさが変わるようにもできます。
焼くときは、レーザーで加熱の強さを変えたり、作ったあとにオーブンで焼いたりすることもあります。
★質問8.廃棄食材を粉末にして印刷し、再食品化したものをまた粉末にして印刷し、再食品化することはできますか。
廃棄物などの形を変えて別の食品にすると先生は言っていましたが、なぜ味すらも再現が可能なのでしょうか?
廃棄物だけでなぜ味が完全再現できるのかが気になりました。
すてられてしまう食材は、消費期限が短かったり、すでに味がついていたり、加熱されていたりします。でも、それぞれに合った使い方を工夫すれば、新しい食材として生まれ変わらせることができます。
味は、いろいろな成分の組み合わせでできているので、味を分けてからもう一度組み合わせることで、人が「おいしい」と感じる新しい味を作ることもできます。
★質問9.3Dフードプリンターや粉末の食べ物を作るときに、いろいろな素材を使ったと思いますが、その過程で新しく興味を持ったものはありますか?
野菜や果物の皮、魚の皮や骨など、ふだんは使われずにすてられてしまうものにとても興味があります。
それらを新しい素材として活かせたらおもしろいと思っています。
もったいないものを生まれ変わらせることも、未来のものづくりの大切なテーマです。
★質問10.どんな時に新しくアイデアがうまれるのですか。
新しいアイデアは、いろいろな人と楽しく話しているときに思いつくことが多いです。
まじめに考えているときよりも、笑いながら話しているときのほうが、ひらめきが生まれる気がします。
研究も、楽しさの中から生まれるものなんですね。
いかがでしたか?
古川先生、お忙しい中、丁寧にご回答いただき、ありがとうございました!!!!!