子ども大学グローバル
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「第6回講義終了」しました。~音ってなんだろう?

素晴らしい先生方とたくさんのことを学んできた第9期も、あっという間に今回が最後の講義となりました。最後の講義前に実施するHRは、実行委員の根本が担当しました。ChatGPTを使った実演をして、テクノロジーの進化を楽しみつつ、社会で求められる力が変わってきていることを確認しました。

ラストを締めくくる第6回講義は、『音ってなんだろう?〜音の「伝わり」と「聞こえ」の仕組み、音の「楽しみ方」〜』というテーマで、ソニーグループ株式会社のR&Dセンターから鈴木志朗先生をお招きしました。鈴木先生は、私たちが普段使っているイヤホンやスピーカーに大きく関わる、「音の圧縮」などの仕事をされています。

講義は、まずは根本的な「音とは何か?」からスタート!
音とは、私たちの周りにある空気が振動することに伴って空気の濃い部分と薄い部分の層が形成され、その伝わりを感じるものです。また、空気の濃い部分と薄い部分の差が、音の大きさになるわけですが、音の大きさにも様々なものがあります。音は本来パスカル(Pa)と呼ばれる単位で表されるのですが、私たちの感覚に合わないことが多いため、一般に人の感覚に合うとされる「デシベル(dB)」と呼ばれる単位で表されています。ここで、実際に学生たちは「60dB」と「80dB」の音を聞き比べてみました。2つの音の大きさは実際は10倍も差があるのですが、聞いてみた時の音には10倍も差がないように感じ、デシベルの使いやすさが分かりました。また、音の高さには、空気の濃い部分と薄い部分の間隔が関わっています。間隔が広いと「音」は低くなり、狭いと「音」は高くなります。

次に、音を聞く私たちの耳の仕組みはどうなっているのでしょうか?ここでは、耳の奥の内耳にある「蝸牛(かぎゅう)」という部分について学びました。蝸牛には、それぞれの層に音を感じ取る有毛細胞と呼ばれるものがあります。有毛細胞は音の高さごとに反応するものが決まっており、全ての有毛細胞が同時に働くことは少ないそうです。このヒトの耳の働きを利用したのがMD(ミニディスク)です。MDは全ての音を記録するCDとは違い、ヒトの耳が働いている部分の音だけを記録します。余計な音を使わないことで音の情報を小さくすること、即ち「音の圧縮」が可能な機械で、今日の技術に大きな貢献をしたものであることを学びました。

そして、講義はアナログとデジタルの違いについてに移っていきました。
音は、車や動物などさまざまなところから波として出てきます。アナログとはなめらかに繋がっている波であり、私達の周りの自然の音はアナログです。一方でデジタルとはマス目があってブツブツときれている点であり、簡単に言うとアナログから少しズレたコピーです。デジタルの音を作るには、まず波を時間ごとに縦に切ります。そして音の大きさごとに横に切ります。出来上がったマス目の交点にむりやりアナログの波形をずらして、点と線で表して完成です。しかし、波形をむりやり交点にずらすため、元の波形と差が出てしまいます。そのため、より細かく波形を切りマス目を細かくすることで、アナログの波に近づけます。私達の身の回りのものでは、CDは横に4万回以上、縦に6万回以上と1秒に60億マス以上に切られているそうです。またCDより細かいハイレゾは横に9万回以上、縦に1600万回以上と1秒に1兆マス以上切られています。しかし、CDやハイレゾはデジタルで、アナログのコピーでしかありません。鈴木先生はアナログの方が本物の音なので、デジタルよりもアナログの音を大事にしてほしいとおっしゃっていました。

無線での音の伝わり方についても学びました。私達が無線で音楽を聞く方法として、Bluetoothスピーカーやワイヤレスヘッドホンなどがあります。まずWiFiとBluetoothの違いについてですが、WiFiはオーディオがWiFiルーターを通して端末などに音が送られますが、消費電力が多いというデメリットがあります。一方でBluetoothでは端末自体にオーディオが送られ、それがBluetoothやワイヤレスヘッドホンなどに送られます。しかし、Bluetoothスピーカーやワイヤレスヘッドホンはルーターに比べて本体の大きさが小さいため、送れる音が10分の1ほどととても少なくなってしまいます。そこで、鈴木先生はLDAC(エルダック)というものを開発し、Bluetoothスピーカーやワイヤレスヘッドホンよりおよそ3倍の音情報を送れるようにしました。鈴木先生は、CDが開発されて世の中の音楽が大きく変わったように、LDACによって人々を感動させたり、世の中を変化させようと多くの会社にLDACを技術提供したそうです。素晴らしいですね!

その流れで、鈴木先生の失敗経験についての話も!
MDが普及していたときにiPodが世に出てきましたが、ソニーはMDを取り扱っていたそうです。しかし、iPodがより広く普及したため、MDはどんどん衰退していきました。このことを、鈴木先生は恐竜の絶滅を例に用いてお話ししてくれました。MDは無くなってしまいましたが、恐竜が鳥へと進化したように、MDに使われた技術は無くなったわけではなく、LDACへと進化しました。失敗ではなく、成功するために必要なことだという事だと感じました。

最後に、鈴木先生から学生たちに大事なメッセージがありました。
「太鼓の大きな音を聞いたとき体がピリピリと痺れるように、人は音を耳だけでなく、体で感じます。YoutubeやTiktokは見てて楽しいものですが、そのようなデジタルな音だけでなく、たまには街中や自然の中にある本物の「音」に耳を澄ませて欲しいということです。また、音や光が世界を支配しているのではなく、それを感じる人間が世界を動かしているということも忘れてはいけません。そして、勉強ももちろん大切だけれど、自然と触れ合い、感覚を鍛えることも大切だ」、と鈴木先生はおっしゃっていました。


※気持ちよい「音」を体で表現してみました!

デジタルな音作りに携わる先生からの、デジタルのものに支配されず、「リアル」を大切にしてほしいというメッセージ。YouTubeやTikTokなど画面の中のものに夢中になってしまう現代の子どもたちに、とても響くメッセージだったのではないでしょうか。鈴木先生、ありがとうございました!