第5回講義は、ミライプラス代表の小林誠司先生をお招きし、「ヒラメキから始まるイノベーション〜みなさんはどんな未来を創りたいですか?~」というテーマで実施しました。
「ヒラメキが生まれるとき」というテーマのもと、前半の講義が進んでいきました。
小林先生は、大学の工学部でCGの研究をされ、ソニー入社後は放送局向け製品やPlayStation2・4、医療機器の開発に携わっていました。その中で特に大切にしていたのが「ヒラメキ」です。講義では、その活用方法についてお話ししてくださいました。
一つ目は、「CGで綺麗な髪の毛を実現する」ときにひらめいたそうです。30年前のCG技術では、髪の毛はゴツゴツした質感しか表現できませんでした。しかし、大学院時代の小林先生は、「サラサラとした自然な髪の毛をCGで再現できないか?」と考えました。当時の技術では、ポリゴンを多数組み合わせて髪の毛を表現していましたが、これではデータ量が膨大になり、処理が困難でした。そこで小林先生は、「髪の毛を筒状と考え、光の反射に着目すれば良いのでは?」と発想しました。髪の毛の光の当たる部分のみを強調することで、世界一美しいCGの髪の毛を作り出すことに成功したのです。
二つ目は「3Dが鮮明に見える理由を探る」時にひらめいたそうです。人は左右の目で異なる映像を見て、それを脳内で統合することで立体的に物を見ることができます。そこで小林先生は、「なぜ片目より両目の方が鮮明に見えるのか?」という問いを設定しました。研究の結果、近くのものはズレが小さく、遠くのものはズレが大きくなることが判明しました。この「ズレ」に着目し、「画像を少しずつずらすことで、2Dの絵を3Dに見せることができるのではないか?」とひらめきました。このアイデアを活かし、2D画像を3D化する技術をテレビに搭載することに成功しました。

「ヒラメキ」に特別な方法はなく、「なぜ?」と思ったら調べることや、「こうなるかも?」と思ったら試してみることの積み重ねがヒラメキにつながると先生は語ります。
また、ヒラメキが身近なところにある例として、小学4年生の男の子が「捨てるのが楽しくなるゴミ箱」を考案した話を紹介されました。その男の子は新幹線の自動改札機に着目し、「ゴミを自動改札機のように吸い取る仕組みにすればいいのでは?」とひらめき、試行錯誤を重ねて実現しました。なんでと思う気持ちや不思議だなという気持ちがとても大事であり、なんでや不思議といった気持ちとそうか、わかったという気持ちのサイクルがイノベーションにとても重要である、と先生は教えてくださいました。
講義の後半では、「未来とは?」という問いが学生たちに投げかけられました。学生たちは様々な意見を交わし、未来への希望を語りました。
そんな中、小林先生は地球の環境問題について教えてくださいました。現在、地球は急激な人口増加に伴い、温暖化や環境破壊、生物種の急激な絶滅が進んでいます。学生たちは「ホットハウスアース理論」について学びました。例えば、日本は2100年には平均気温が+4℃に達し、外での活動可能時間が大幅に減少してしまうことや、海面の上昇の影響で、日本の砂浜の約9割がなくなってしまうことです。そして、早ければ2030年には平均気温が+1.5℃に到達してしまうといいます。この事実に学生たちは危機感を抱き、未来が決して明るいものばかりではないことを認識しました。
次に小林先生はSociety5.0の未来についても教えてくださいました。Society5.0の社会では、誰もが平等に医療を享受することが可能になる技術や、音声認識で、言語の壁がなくなる技術など、誰もが平等に幸せを得られる世界があることを教えてくださり、学生たちは、こうした技術の力で社会をより良くする可能性を学びました。しかし、小林先生は「間違った方向に進めば、暗い未来になる」と警告します。未来を決めるのは、これからの世代である学生たち自身であり、今、どのような道を選ぶかが重要なのです。
最後に、小林先生は「どんな未来を創りたいか?」と再び問いかけました。Society5.0の学びを経て、学生たちからは「世界中の人々が平等に幸せになれる未来を創りたい」という声が多く聞かれました。
また、小林先生自身のキャリアについても教えてくださいました。SONY時代、「自分が生きている意味とは?」と考えたことが転機となり、「すべての人の学びを変えることで未来を変えられるのでは?」との思いから、ミライプラスを設立し、子供たちが好奇心を持ち、自ら考え、自分らしく生きられる世界を目指して活動されています。
AIの発展による仕事の変化についても言及し、「AIが得意なことはAIに任せ、人間にしかできないことを探すことが大切」と語られました。そのために、常に興味を持ち、何を学び、どう考えるかが重要だと伝えられました。
小林先生、第5回講義ありがとうございました!
